ごとうゆうの本棚

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本好きのごとうゆうが読んだ本の感想などを気まぐれに紹介していくブログ

『悲観する力』

おはようございます🌞

梅雨の間の晴れはいいものですね。


今週の本はこちらです📙

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悲観する力 (幻冬舎新書)


基本データ

『悲観する力』
著者:森博嗣
出版社:幻冬舎
価格:800円
ジャンル:エッセイ
読了日:2019年4月30日
 

感想

「楽観的」とか「悲観的」とか世間ではよく聞く言葉ではないでしょうか。

 

本書で紹介されている「悲観」とは、「「物事は予測や予定どおりには運ばない」と考えること」だそうです。

不測の事態に対して考えることの大切さを説いています。 人間は完ぺきではないし、過ちを繰り返すことを前提に、それを少しでも食い止めるためには「悲観」しかない、という。

 

森さんが専門としている工学では当たり前とされている「フェールセーフ」(「機械は必ず壊れる」「誤操作は必ず起こる」ことを前提として、万が一そうなった場合に安全側に制御する手法、原則のこと)という思想が、失敗、後悔を未然に防ぐということらしい。

「フェールセーフ」という言葉自体はこの本で初めて知ったが、確かにそれは正しい。

森さんから見た、いわゆるゆとり世代の楽観的思考は、大人が楽観的思考を推奨し、そして子供たちが真に受けた結果であると指摘している。

建前として、チームや会社の士気を上げるために自信に満ちた楽観的発言をトップがすることは往々にしてある。

しかしそれは、チームや会社のどこに弱点があって、それをどのように対策すべきかを既に判断しでいるからであり、そこを考えずに言葉だけを全部真に受けてしまったら、何も中身のない、自分への過大評価だけの楽観的思考に陥り、対策不足による失敗は目に見えている。

失敗する経験を積み重ねられればいいが、昨今は周りの大人が、失敗をさせないようにしている。

成功を演出させたり、反省をさせずにただ慰めて終わってしまったり。

そこから子どもたちは何を学ぶのだろうか。 大きくなって社会に出てから、初めて失敗をした時に小さい頃のように助けてくれる周りはいない。

ここで心が折れるのも納得だ。

「自分はできる」「こうすれば、ああなる」ということに疑いを持つ癖を持っていないからである。

 

この本での「悲観」は世間で勘違いされがちな、ただ嘆くことだけでない。

客観的姿勢から、物事に対して用意周到な準備をする姿勢のことである。

上手くいかないことを前提として、どのような原因が考えられるかという思考をすることが大事で、その客観的姿勢によって、見逃しがちな事柄も分かってくる。

物事に用意周到な準備をすれば、人事を尽くして天命を待つということにつながり、仮にそこで失敗しても、ある種「やれるだけのことはやったのだから仕方がない」と思える。

その上、限りなく上手くいかない原因を探し回って失敗した結果なのだから、次につなげるためのファクタ、或いは失敗の原因を探すことも容易になる。

想定できなかった原因があるとするならば、それはなぜ想定できなかったのかを考え、次に何かをするときには、チェックリストに前回想定できなかった原因を入れることが出来、より完璧に近い準備をすることが出来る。

それが、森さんのいう、「悲観」である。

 

逆に「楽観」とは「考えないこと」「考えないための楽観ではないか」と警鐘を鳴らす。

周囲からの「楽観」の反動で、社会に出たとたんにほめてくれない周囲に怯えることになる、という。

しかし、その悲観こそが逆に現実を見つめるチャンスであり、周りの楽観の支配から脱出する契機になると励ましている。

もちろんすべての楽観を否定しているわけではなく、「悲観」と「楽観」のタイミングやバランスが大事だと強調している。

人生において、先を悲観し、後を振り返って楽観するという姿勢がよいらしい。

一番良くないのは、最初から「楽観」して、対処しなければならない事態を直視しないという姿勢である。

そういうことをしていれば、結果が近づくにつれ、不安になり期待も出来ないのは当たり前である。

最初にありったけの「悲観」をして準備をしておけば夢も期待も膨らみ、自信もついてくる。

世間で言われる「自信家」はまるで楽観的だと勘違いされることも多いようだが、そうではなくて、まず悲観して自信を持てるくらい自分で努力し、準備を万端にし、そしてあとは結果を待つのみ、そういう状態に自分を持っていっているからである。

 

何にせよ、まずは「上手くいかないこと」を想定し、準備を怠らない、それが本当の「悲観する力」だとこの本は教えてくれる。

 

最後に一言

帯の「楽観的な思考が、成功を遠ざける」というフレーズに惹かれた。

昨今、「引き寄せナントカ」や「成功するために成功したというフレーズで手帳を書こう」というような「明るい」メソッドが氾濫しているなかで、この鋭い一文。

森さんのエッセイは好きだということもあり、手に取らずにはいられなかった。

読んでいくにつれ、その「引き寄せナントカ」も「成功するためのナントカ」も、ただ何も考えずに書いていたり実践していたりすれば効果は得られないだろうが、この「悲観」という考えをよく理解したうえで、目標を立て周到な準備をしていけば確かに効果はある程度ありそうだと思った。

 

この「悲観」という客観的視点が今の世の中には圧倒的に足りない、そう気づかせてくれる本だった。