ごとうゆうの本棚

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本好きのごとうゆうが読んだ本の感想などを気まぐれに紹介していくブログ

『文字渦』

 こんにちは!

火曜日の雨はすごかったですね☔

雨の日は体調が悪いので嫌いです(。-ω-)


さて、大好きな円城塔さんの最新作をご紹介します!📙


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文字渦


基本データ

『文字渦』
著者:円城塔
出版社:新潮社
価格:1800円
ジャンル:小説
読了日:2019年5月3日
 

感想

ファンである、円城塔さんの新作。

 

もともと、前衛的なSFを得意としている円城さんがさらに進化して帰ってきた。

近未来的SFと、アナログツールとしての文字を融合させた連作集。

 

この際はっきり言ってしまう。 何が書いているか分かりにくい。

書いている本人は分かっているのだろうか。

分かって書いているのだろうし、書いていてきっと楽しいに違いない。

こちらが読んでいて楽しいのだから。

このごちゃごちゃ感が、それでいて数学的、論理的に整然としている感じが、複雑な心地よさを生むのだろう。

何を意図して書いているのだろうか。

逆に意図せず、筆の走るままに書いているのだろうか。

シュルレアリストによる、自動速記を意識したのか。そんなことはない。

それよりかはしっかり分かるように物語が構成されている。

なんて想像を巡らせたりもした。

 

最初、中島敦の『文字禍』からヒントを得ているのかと思って読んだら完全に的が外れた。

そりゃそうだ。だって「渦」だもの。

 

読者は最初の一文から文字に巻き込まれる。洗濯機に放り込まれたような気分になる。

「阿語」という物語上の言葉をめぐって様々な人物が文字に対して向き合い、巻き込まれ、困惑していく。

最終的な結末もはっきりさせないところがあるというのがまたニクい。

君たちも文字に対して向き合って、ぐちゃぐちゃになってごらん、そこから道を見つけて脱出してごらんという著者からの挑戦状のような響きさえある。

しかしながら、漢字の成り立ち、辞書の成立などにも触れ、最終的に変化していった、かなまで扱うのはさすがである。

 

個人的に好きなのは、「金字」でのアミダ・ドライブ。まぁ、読んでみて。

そういう捉え方、扱い方もあるのか、と感心させられる。

 

そもそも、漢字は表意文字であるのに対し、かなは表音文字である。 そこの違いを際立たせて、かなの漢字に対する抵抗のようなものを描写していく「誤字」もまた壮大な物語で感動すら覚える。

ただし読むときは注意である。かなり疲れる。

 

しかし全体を通して、参考文献をしっかり使って史実と著者が描きたいSFを上手く融合させているので、面白い本を探している方にはぜひ読んでもらいたい。

 

最後に一言

これ、絶対担当した校閲者は泣いただろう、眼精疲労になっただろう。

出版までの苦労をしのばせる作品である。

これが電子書籍になったらさぞ面白いだろうと思うのはやはり平凡な発想だろうか。

しかし、電子書籍になることで、今まで石に、粘土に、紙に刻まれてきた文字が、プログラムを使ってスクリーンの上を滑っていくのは、文字の歴史を題材にしたこの物語にピッタリではないだろうか。

 

帯に、「円城塔の新たな到達点にして金字塔」と書かれている。(まさか「金字」とかけたのだろうか。)

ここを到達点になどしないで、これからもどんどん読者を巻き込んでいく実験的、プログラミング的SFを書いていってほしい。